第14回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会

ご挨拶

第14回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
会長 中川 尚志

 このたび2019年5月23日から24日の会期で福岡国際会議場にて第14回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を担当させていただくこととなりました。大変名誉であるとともにその重責に身が引き締まる思いでいます。このような機会をくださいました学会役員ならびに会員の皆様に御礼を申し上げます。
 今回は学会のテーマを「めざせ質の向上!多職種連携でつながるチーム医療」としました。小児医療には様々な職種の方が関与します。以前の医療現場はパターナリズムをもった医師がパラメディカルと呼ばれた他職種の方に指示をだすというものでした。現在のトレンドは医師を中心として、コメディカルと名称を変えた多職種と相談しながら医療にあたるチーム医療が基本です。ひとりの判断でなく、医療、看護、リハビリなど様々な視点からみることにより、家族のケアを含め、質の高い医療が提供できます。このため、各セッションに小児耳鼻咽喉科医師以外の方々に加わっていただいています。
 1日目の皮切りのシンポジウム1には福岡県の小児難聴体制について取り上げます。耳鼻咽喉科医師と言語聴覚士、聴覚特別支援学校教諭の3名をシンポジストとして、連携によって何がえられるか、また今後の課題について話をしてもらいます。シンポジウム2として成人への気管切開と異なる、小児気管切開の手技と術後の合併症、術後の問題点を小児外科の先生に加わって頂き、ディスカッションします。シンポジウム3は、現在、ホットトピックとなっている先天性サイトメガロウイルス感染症について第一人者であります長崎大学小児科の森内浩幸教授と成育医療研究センター耳鼻科部長の守本倫子先生が疾患の医学的側面を、心身障害児総合医療療育センター小児科の高橋長久先生に重複障害児の療育を含めた問題点について触れていただきます。これに加え当事者として、トーチの会の方が医療者や教育者に対する要望を話されます。充実した議論となり、今後の指針へつながればと願っています。
 2日目はシンポジウム4として、小児の摂食・嚥下障害に対する医療連携と題して、病院小児科医、言語聴覚士、小児外科医、耳鼻咽喉科医にディスカッションをお願いしています。シンポジウム5は緊急性を要する気道異物の概説および緊急性のある症例の対応について耳鼻咽喉科医と小児科医の立場から述べていただきます。
 また特別講演として韓国の小児耳鼻咽喉科学会の理事長をされていた、高麗大学のChae教授が韓国における小児難聴の問題点を講演してくださいます。日本小児耳鼻咽喉科学会の課題の一つは国際化です。アジア地区との協力の一助になればと企画しました。
 教育セミナーは3つ用意しました。九州大学小児口腔医学の山座治義准教授に下顎顔面の疾患に対する歯科的アプローチ、米国テキサス大学の牧嶋知子先生にComputerized dynamic posturographyによる脳性小児麻痺患者の平衡機能の評価、遺伝相談に詳しい九州大学環境発達医学研究センターの小川昌宣先生に出生前診断と多様化する倫理的課題、をお話しいただきます。
 ランチョンにもCE-Chirpを用いた誘発電位とmulti-tympanoの話、最新の機器である軟骨伝導補聴器、難聴児・人工内耳装用児の言語力を伸ばす早期介入モデル、小児急性中耳炎の難治化リスクファクターの変遷と治療を取り上げています。
 他にもモーニングセミナーではご本人も吃音である九州大学耳鼻咽喉科の菊池良和先生に吃音の遺伝学、スイーツセミナーでは近年注目されている聴覚情報処理障害の第一人者であり国際医療福祉大学言語聴覚学科の小渕千絵先生がお話しくださいます。少し組みすぎたかなと思われる充実した内容になっています。
 一般演題も105題、出題してくださり、感謝いたしております。議論を深められ、充実した時間を過ごせたらと願っております。
 5月の福岡はまだ暑くなる前で過ごしやすい季節です。多くの皆様がご参加くださいますよう、よろしくお願いいたします。

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